牧師 高橋勝義![]() |
父に溺愛されるヨセフに妬みと悪意を抱いていた兄たち。しかもその兄たちが自分を拝むという夢を二度も話すヨセフに、兄たちの怒りと憎悪は増すばかりでした。(創世記37:8)
父ヤコブは、このような兄弟の関係を薄々知りながらも、羊を連れシェケムの地に行った兄たちの無事を見るために、ヨセフを使いに行かせます。シェケムは昔娘ディナのことで虐殺事件を起こした場所でした。遠くから来るヨセフを見た兄たちは彼を殺そうと企むのですが、長子ルベンが阻止し、ヨセフは穴に投げ込まれます。しかしルベンがいない間に、ユダが兄弟たちに「弟を殺し、その血を隠しても、何の得になるだろう。さあ、ヨセフをイシュマエル人に売ろう。われわれが手をかけてはいけない。あいつは、われわれの弟、われわれの肉親なのだから。」と提案し、イシュマエル人の隊商に銀二十枚で売り、ヨセフは遠いエジプトに連れて行かれました。(創世記37:26~28) この時、神の御手が動き、兄たちは悲惨な弟殺しに手を染めることから免れ、ヨセフの命も守られたのです。
初めの人アダムとエバの息子の兄カインは「罪はあなたを恋い慕うが、あなたはそれを治めなければならない(創世記4:7)」と神から愛の忠告を受けていたのですが、弟アベルへの嫉妬からくる激しい怒りを止められず、弟を殺してしまいました。実はこのカインの姿は、私たちの姿でもあります。心を暗く支配する悪意から解放される秘訣は、正直に心の状態を認めてすべての罪の為に死んでくださったイエス・キリストの十字架を見上げ、その愛の中にとどまることです。その時心の闇に神の光が差し込み、悪意から解放されるのです。
「憎しみは争いを引き起こし、愛はすべての背きをおおう(箴言10:12)」